六月に雨が

You should take your umbrella.

恋の紫煙

原題:志明與春嬌

 

監督:パン・ホーチョン(彭浩翔) 2010年香港

ミリアム・ヨン(楊千〔女華〕)ショーン・ユー(余文樂)
チョン・ダッミン(張達明) ヴィンセント・コク(谷德昭)

 

東京国際映画祭 | 恋の紫煙

 

2009 2 19 が二人の一日目
化粧品販売員の余春嬌(ミリアム・ヨン)と、広告会社に勤める張志明(ショーン・ユー)
なんてことない出会い なんてことない会話 なんてことない二人の始まり
始まりそうでなかなかスムーズには始まらない二人のあれやこれや…という話だけれど

丁寧に恋のはじまりを…というような情緒過多な感じではなく、なにしろパン・ホーチョン監督作なので

2007年に香港で「喫煙公衆衛生改正条例」が施行されてから室内禁煙ということで
町の路地などの場所にある喫煙所に集う職業も背景も様々な人たちのもうもうと煙る紫煙の中で話すことといえば
つまりあまりろくでもない、よく言えば当たり障りがなく笑いあえて共有できるような男と女の噂話やジョークといったバカバカしくもわかりやすい話題ばかり。


でも恋の始まりからロマンチックが用意されてるなんて、そうそうないよね?信じられないでしょ?
とパン・ホーチョンが言ってるのかどうかは知りませんが

そんな中でふと知り合って、なんとなく気になったり、ちょっと近づいたかと思えばまた遠ざかる距離の中、二人のちょっとした会話やどうということのない出来事、やりとりと表情のいちいちがやけに自然というか

恋愛の高揚感と引っかかりとしてなんとも肌感覚でわかる!気がしてしまって
なんでこんなにわかってるんだ?とパン監督に問い詰めたくなるくらい、気持ち良くスムーズに見ていられた。


嬉しさに思わずほころんだ顔と、でもその満面の笑みを背中でかみ殺してからショーンを振り返るミリアムの少し年上の女のリアルな感じ。とか。

 

なんてことないのに魅力的な男ショーン・ユーのくだらなさ、しょーもない感じもいい。なのにその目といいやっぱり魅力的なこと。

だけどほんとにしょーもなく普通の男、いそうな人間な感じなのがいいのだ。

 

ほんとうに些細だからくるのかもしれない。細やかでささやかなことの積み重ねに
大仰なクライマックスなんかではなく、夜毎どこでも起こっていそうな二人の一夜に
でもその時の春嬌の胸のうちで、確かにしっかり本当に始まっただろう…と思わせておいて
最後もやけに可愛らしい恋愛映画らしく終わるのかなーと思いきや…

 


志明と春嬌のなのか、男と女のなのか…なんとも可笑しいけれど、こういうずれってなんとも的を射てるなーこんちくしょーと、憎たらしいほどピタリと正解で
それをわざわざご丁寧にここに持ってくるかっていうのも、恋愛映画だけれどやっぱりパン・ホーチョンらしい恋愛映画な気がした。


粗口という広東語の俗語、多種多様だけれどいわゆる罵り言葉だとか
放送禁止用語のような「ピーッ」ってなるような台詞、言葉だったり
この映画に限らず香港映画ではけっこう出てくる言葉もあって、耳につく、残りやすい言葉だけど、
だからって「実際に使っては絶対にダメよ」と言われるような言葉でもあるんだけど
それも満載。

でも無駄に口が悪いわけじゃないというか
その為に3級指定になってしまったというけれど、そんな言葉がポンポン飛び交う俗っぽさの中に
思わず共感してしまうラブストーリーの絶妙な味わい。

春嬌があの場面で志明に言う言葉も、お行儀のよい言葉じゃけしてないけどもうこれしかないでしょう、と思う言葉で

春嬌と同時に思いっきり同じ言葉言ってしまいそうになった。

 

 

第30屆香港電影金像獎最佳編劇 第30回香港アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞しているのも納得のストーリーに運ばれる気持ちよさ。

楽しいったらない。何度も見たい。もっと詳しく日本語字幕をゆっくり見たいので、映画祭公開だけじゃなく日本版DVD化されるよう心からお願いしたい。

 

 

 粗口については ご参考までに   粗口 - 香港網絡大典

 

 検索しているとこんな頁もあった

 

「恋の紫煙」に関する感想 / coco 映画レビュー

 

2のほうの感想も上にきているけれど、評価は良いのに「感動指数」というのがゼロというのも、笑ってしまったけどなんともこの映画らしい気がする。

 

この二人のその後、なんとなく想像もつくような…と思っていたら続編「恋の紫煙2」(春嬌與志明 2012香港)は今度は場所を北京に移して、二人のその後が見られるそうだけれどやっぱり映画祭公開のみで日本でDVD化の予定はなし

 

 

モウモウと煙っぱなしで、恋の始まりから、もつれた二人がもう一度…というきっかけまで、すべてが煙草に絡んでいく映画なので

てっきり喫煙者のこんにゃろーというような気持ちから撮ったのかな?…と思ったら監督であるパン・ホーチョン自身は非喫煙者だという東京国際映画祭の関連記事、本作に関するインタビュー、Q&Aもおもしろかった。

 

東京国際映画祭 | アジアの風『恋の紫煙』パン・ホーチョン(彭浩翔)監督インタビュー(10/25)

 

東京国際映画祭 | アジアの風『恋の紫煙』10/25(月)Q&A

 

 

本編とはぜんぜん関係ない話だけど ↑ での
小道具として用意した煙草をスタッフに吸われてしまったという話に、ビートたけしが映画「夜叉」撮影中のエピソードをオールナイトニッポンで話していた

「撮影現場で用意してあった自販機の煙草がなくなって『誰だとったのは?!』ってなってたんだけど、オレじゃない、と思ってたら田中邦衛さんだった」

というような話を思い出してしまった。スターのお茶目とスタッフが…というのでは違う話なのかもしれないけれど。

 

 

 

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 (2010~2014に見た映画)