六月に雨が

You should take your umbrella.

ジ・エレクション 仁義なき黒社会

 

 

原題:飛砂風中轉 2010年香港

 

監督/脚本:フェリックス・チョン(莊文強) プロデューサーにアラン・マック(麥兆輝) 原案にチャップマン・トー(杜汶澤)も参加。

 

出演は:イーキン・チェン(鄭伊健) ジョーダン・チャン(陳小春)
アレックス・フォン(方中信) ミシェル・イェ(葉璇) キャンディス・ユー(余安安) チャウ・パッホウ(周柏豪)

英題のOnce A Gangster もピッタリくる

欲望の街 古惑仔シリーズの主演二人が13年ぶりに共演し…
ということで

 


映画『ジ・エレクション 仁義なき黒社会』予告編 - YouTube

 

 

この予告の始まりのような雰囲気の映画…かと思っていたら
途中のスクラッチ音からの転調以上に違ってた。
いやたしかに血で血も洗っちゃいるけど…あってるのは「異色」
ということだけかもしれない。

 

 

 

 

火腩(陳小春)の若い頃をデレク・ツァン(曾國祥)が、燕子文(鄭伊健)の青年時代をShineの黄又南がそれぞれ演じていて、そんな彼らのまだ若き日、家の為にと火腩が黒社会入りするところから始まるけれど

 

 火水(アレックス・フォン)という親分の下で青春の日々を抗争に明け暮れた火腩も今ではレストラン業に成功し、家庭も持ち安泰の中年に。

 

しかし借金でクビが回らない火水は役目を押し付けようと、次期会長候補に火腩を推すのだが、同じ組織の女親分の鴨梨(余安安)は自身の息子で、組の為に刑務所に入っていた「燕子文こそ正当な後継者だ」と言いはじめ、本人達の思惑とは無関係に後継者争いの火種は徐々に大きくなりはじめる…

 

劇中流れる、というか黒社会のみなさんがやや唐突な感じに歌い出す歌が
チョウ・ユンファ主演の「黒社会」(原題:我在黒社会的日子1989年)の歌で原題でもある「飛砂風中轉」

 

組織の名門の家に生まれ、若くして組織の為に収監されていた…というイーキン演じる燕子文はけれどその塀の中で学問に目覚め、出所したら跡目どころか香港大学へ入学したい、と言い出したり

立ち姿の貫禄、相手が何人いようと無問題という気がする頼りがい感じる辺りはやっぱりビシッと健在という感じでしたけど
いつ見ても「飄々」という言葉も似あうイーキンらしい気もする
なに考えてるのか読めない感じと

 

対照的に、わかりやすいというか年齢的にももうじゅうぶん
オヤジと言っていいんだよね、そういえば…としみじみ思うような小春の
商売上手で、アニキである火水の言う事に下手な波風立てずに妻子も守ってなんとか乗り切る術はないものか…と考えたりの大人な感じ

 

古惑仔シリーズとはまた違った、けれどそれぞれ個性的な味わいのある大人になった二人もよかった。

 

 

 

最初のほう、軽妙なというかなんだろう…もう笑っていいのか、というか、笑うところなのかな?…と思ったユルッとしたコメディテイストや
…これはちょっと…と思う空気も漂い
邦題にもあるエレクションやウィルフレッド・ラウ(劉浩龍)の演じるヤンの
インファナルアフェアのパロディなどナンセンスに展開される一方で
ハードな抗争場面には黒社会ものの雰囲気もよく出てるしで
陳子聰(コンロイ・チャン)の阿呆な親分とその下へ潜入しているやっぱりマヌケのヤンのアホアホコンビに、あははは笑ってるうちにハードな方は救いもないまま、分裂気味のまま終わっちゃったりしたらどうしよう…不安も湧いたけれど、あ、だいじょうぶ、ってなりました途中から。

話としてはイーキンが登場してからが本格的に展開していくと思って見るといいかと。

 

 

アレックス・フォンの、ちょっとイヤなというか、こういう上の者のズルさみたいなのも上手くてよく効いていたり、何より図らずも会長の座をめぐって敵対することになってしまった二人という構図に「…どっちへ転ぶんだ?」は結末に向けて加速していく期待感になっていた。

 

 

 

 

 

 

かつての古惑仔シリーズといえば外伝やスピンアウト作も多く作られていたけれ「欲望の街・古惑仔I / 銅鑼湾(コーズウェイベイ)の疾風」シリーズのしょっぱなからインパクトある悪いやつぶりを存分にかましてくれたフランシス・ン(呉鎮宇)主演の「旺角[才査]FIT人」という映画があり

 

そもそもは古惑仔シリーズの外伝的な映画*でありながら、低予算の小品が思わぬヒットして作られたという第二作「去[口巴]![才査]FIT人兵団」もふくめてちょっと風変わりな楽しいコメディだけど(個人的には無理やり鉄砲玉のクジを引かされてじゃあ最後に家に電話させて…と頼むも自分の家の番号が何度かけても思い出せない…と泣くジャンユーが大好き)


ただ本編をおちょくっただけのパロディというだけでもない、ちっともかっこよくなんかない悲哀もキッチリ描いてくれることで、つまりは「こんな世界に、こんな男に憧れちゃいけないカッコイーなんて入るもんじゃないんだよ」とレン・クァンたちが体言しているような「こんなクソみたいな世界でいいようにされちゃバカを見るだけだよ」と言ってるような映画でもあった気がするのですが

 

 

本家シリーズのほうはフィクションとしての楽しみが十二分にあった、個人的にもかなり大好きな映画シリーズだけれども(サントラまで買って今でも聴いて歌っている…)
そんなスピンアウト作にあれこれ勝手に思っていたことなんかもふくめて

当の古惑仔たちだったイーキンと小春が、二人の場面といいほどよい懐かしさも感じさせてくれながらも、実にスッキリ納得のいく、今の答えを出してくれたような、自分達で気持ち良く落とし前をつけてくれた映画のような気がした。

 

最初の不安はどこへやら吹っ飛んだ後には、映像といい
気持ちのいいラスト。見てよかった。

 

 年月消逝中 才悟風中轉…

 

ユンファが歌っていた妙に味わいのあった気もする歌も甦ってくる
一大ジャンルだった黒社会映画へのオマージュでもあるのかも。ちょっと風変わりなブラックコメディテイストにだけど。これがホントの黒色幽黙か。

 

作り手たちの愛情なのか配慮なのかはわかりませんが、ヤンはこの映画では確かにアホアホだけれど最後にちょっと、よかったなって思った。

 

 

 

 

 

 *正確には許可もらえずで正式な外伝になり得ずだったという話は「旺角[才査]FIT人」に参加していて頑張ってる姿も拝見できる谷垣健二氏の本でそんな裏話から苦労話まで読むことができます。

 

香港電影 燃えよ!スタントマン

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