六月に雨が

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パスタマシーンの幽霊

 

パスタマシーンの幽霊 (新潮文庫)

パスタマシーンの幽霊 (新潮文庫)

 

 

裏表紙に「恋をしたとき、女の準備は千差万別。」「女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。」と書いてあるけれど、これは恋の本なんだろうか?

 

恋愛の話もある、あるというか読み終わったらほとんどそうだった気もした、前の「ざらざら」から続いているアン子の恋の話もあるし、表題の「パスタマシーンの幽霊」だってそれは恋人の部屋で見つけたパスタマシーンに問い詰めた所から話は始まるし、他にもいっぱい恋も出て来るんだけれど

 

最初の一編が「海石」と書いて「いくり」と読む圧倒的でどこか神話的な話から始まるのもあって、まるで色々な立場、年齢、環境にいる様々な女たちをどこかから見ている神様か何かがいて、少しずつそれを私にも見せてくれているような気がして、恋もそういう女達に起こる出来事の一つのように思ったのかもしれない。

 

描かれている恋愛も、こんな感情を持つというのはなんと可愛らしいことかと涙ぐみたくなるような恋もあれば、いらないのならそれはいらないでいいんだなと思う話もあり

 

クウネルで連載していた短編というとクウネル的なという風に思うかもしれないけれど、表題作である「パスタマシーンの幽霊」は

蕎麦も打ったし、餃子の皮も手作りしたし、パンも焼いた

という ”料理上手なばあちゃん”が念願のパスタマシーンを孫達からプレゼントされてじきに亡くなって、幽霊になってまでパスタを作りに出てくるのだけれど、その孫の一人の恋人で料理が下手だと自分で言い「パエリアなんか、土鍋で作っちゃうような」女をまるで仮想敵のように思っているのに、恋の終わった反動で料理に没頭し「今にパエリア女になってやる」と叫ぶ唯子の所にあらわれて

料理上手な女なんて、ロクなもんじゃないよ。

 と非難する。

 

イメージを持ったりそれで整理をつけると便利なこともいっぱいあるなと思うけれど、そんな風にだけでは収まりきらないこともあるからおもしろい人や物事に会えたり、おもしろい本が読めたりすることもあるんじゃないかなーと思ったり。

 

 

やっぱりああだこうだと書かれている以上にあれこれ思う短編集だったので「こういう本でしたよ」とスラスラとわかりやすく伝えることは出来ないけれど、普通に幸福だと言われていることがそうだとは限らないし、逆もまたそう、ということもとても思った本でもありました。

 

 

 

 

 

当たり前だけど自分が女だからって女のことが何でも分かるわけじゃない。分かると思うことと、言ってることは分かる気はするけれどなんだかなぁ…と思うことでもう何だかモノイエバクチビルサムシとこの暑いのに思ってしまうんだけれど、こんな風に色んな女が書かれているのを読んでいると恋の準備じゃなくても千差万別、それでいいじゃないか、ええじゃないかええじゃないかと一人ええじゃないか運動でも始めたくなってしまった。

 

 久世さんも読み返して落ち着こうと思う。

 

卑弥呼

卑弥呼

 

 

これもすごくいい本です。

 

 

  

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