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六月に雨が

You should take your umbrella.

果てしなき渇き

読んだ

 

果てしなき渇き (宝島社文庫)

果てしなき渇き (宝島社文庫)

 

 

内容紹介
失踪した娘を捜し求めるうちに、徐々に“闇の奥”へと遡行していく父。娘は一体どんな人間なのか――。ひとりの少女をめぐる、男たちの狂気の物語。その果てには……。


内容(「BOOK」データベースより)
部屋に麻薬のカケラを残し失踪した加奈子。その行方を追う、元刑事で父親の藤島。一方、三年前。級友から酷いイジメにあっていた尚人は助けてくれた加奈子に恋をするようになったが…。現在と過去の物語が交錯し、少しずつ浮かび上がる加奈子の輪郭。探るほどに深くなる彼女の謎。そして用意された驚愕の結末とは。

 

ジリジリと熱い。イヤな何かが燃えているような音や匂いが、藤島からしてくるように。

ヘビーなんだろうなぁ、と映画は見ていないんだけど、いくつかの感想を読んで覚悟はしていた。小説、原作と映画は違うだろうけど、映画の感想のあの凄まじさからどれだけ引いたって、口当たりよく爽やかな小説になっているわけがない。

ヘビーな、後味の悪い小説はけっこうなダメージを食らう。文章だからくるということがあるような気がする。文字そのものだけでなく行間や想像、書かれていることを追っていくうちに心の中で膨らんでいくものは、映像とは違った響き、残り方をすることがある。

 

読み始めて一度水で顔を洗い、まるで自分を縛り付けるようにして読んでいた。誰に読めと言われているわけでもないのに…と熱い頭で思いながら。じきに引き込まれていったけれど、頭はやけに熱い気がするのに、肩の辺りに寒気がし…風邪を引いたみたいだ、と読み終わって脱力しながら思って

解説で池上冬樹

こんな小説読みたくないと何度思ったことか

と書いてあったのに、なぜかホッとしてしまった。

 

 

ミステリーなので、フーダニット(Who done it?)的なことは書いていない感想ですが、ちょっと開けておきます。念のため。

 

 

 

 

 

 

 

別れた妻からの連絡で失踪したという娘を捜し始める、この藤島という男に絶望しか感じない。事態にではなく、藤島という男そのものに。始めのほうはそれでも彼だけが悪いわけではなく、歯車のかみ合わせが徹底的に上手くいってないのかと思っていた。元妻の桐子と藤島。寝顔さえ苦悶を浮かべているのに気付いて「痛み」を覚えたなら、他に出来ることがあるだろうに。バラバラの両親でもせめて娘が失踪したという痛みを共有することが、なぜ出来ないんだと思うけれど、だけどなんてことだろう。こうなら良かったどうのの話じゃない。絶望と感じたものに底がない。

 

 警察を事情を抱えて退職し、今はアル中だとか、いつ町角で死んでいても誰も驚かないような男が、上手い話かやばい事情か、何でもいいけれど事態に否応なく関わり巻き込まれていくうち、絶望の塊だった男が徐々に生気を取り戻し、やがて小さなものでも希望を取り戻す再生の物語…(次の巻では小さいながら私立探偵事務所を開いていたりする)というようなタイプの話を昔、読んだことがあるような気がするけれど、そんなことはこの本にはとことん何の関係もない話だと、主人公であるはずの藤島から徹底的に感じさせられ、教えられていく。どこまでもどこまでも底なしに落ちていく絶望感。

 

藤島と、もう一人の語り手の語る幻のように見えてくる加奈子の姿に、やがてこの絶望に、憎しみ、怒り、どんな言葉も軽々しく空しく見当違いに思えてくる。ブラックホールのようになってしまった娘。因果応報がウロボロスの蛇のようにすべてを飲み込んでいくのを、ただ最後まで見届けるしかない。それさえ何の救いにもならないけれど。

 

 

これが海外の翻訳小説であれば、もう少し冷静に読めたのかもしれない。でも日本の小説だからヘビーもヘビーで、なんて本だと思いながら、だけど最後まで読まずにいられなかった。

誰にでも薦められる本ではほんとにない。ただノワールというなら、たしかにこんなにノワールな本はないと思うし、圧倒的に読ませる、読んでしまう本だと思う。

私は腹が立って、誰が目を逸らしてなんかやるものか、と思っていたのかもしれない。藤島のような父ではなかった(幸いにして)けれど、それでも父の娘として覚えた怒り、その果てを見ずにいられなくなって。

 

 解説でもジェイムズ・エルロイの名前が出て来るけれど、ダークなノワールやハードな海外翻訳小説を何冊か読んだことがあれば、スタイルやダークさには違和感も覚えないと思う。

ダークな世界に一筋の光も差さず、アウトローなヒーローやピカレスクではないと思うけれど。ピカレスク小説なら、胸のすくような思いや共感がどこかにあると思うけれど、そんなのものはどこにも見当たらない。むしろどんどん遠ざかっていく。

藤島の自分を欺く為の戯言にうんざりし、本当に救いがたい、一人で灰になるまで燃え尽きて勝手に破滅してろ!と怒りに突き放したくなるのに、そう思うことにも腹が立って、悲しい。こんなものが見たかったのかと、やりきれない。どこまでいっても本当に果てがないように、クタクタになった。

 

 

 

 でも映画見ちゃうんだろうなぁ、と思う。しばらくは無理だけど。この物語がどう描かれているのか?いつか見たい見るだろうなと思っています。八仙飯店よりツライのかもしれないけれど。

 

 

 

 

 

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