リゴル・モルティス/ 死後硬直
*怖い映画、というか画的にも怖いので苦手な人はリンク先など開くのやめておいたほうがいいと思います。
原題:殭屍 2013年香港
監督:ジュノ・マック(麥浚龍)
出演:チン・シウホウ(錢小豪)アンソニー・チャン(陳友)クララ・ウェイ(惠英紅)リチャード・ン(吳耀漢) パウ・ヘイチン(鮑起靜)チョン・ファト(鍾發)ロー・ホイパン(盧海鵬)
哀愁漂うキョンシーであった。
『リゴル・モルティス/死後硬直』ジュノ・マック監督&清水崇プロデューサーQ&A | OKWave Thank You
プロデュースに日本の清水崇ということで、映画祭後に日本公開もすぐじゃないか?と思ってましたが、いつかは未定だけどとりあえず来る、という感じのよう。日本語字幕でも見たい見たい。楽しみ。なのでとりあえず、何がどうしてどうなった?は無しの感想だけ。
あぁ清水崇っぽいなと思う、あんな感じのが、飛び出したり、飛んだり跳ねたりと元気にご活躍されていましたが、上の話を読むと
僕のプロデュースの立場は、内容はジュノ監督ありきでしたので、サウンド・デザインの部分でアドバイスをした形ですね。
とのこと。じゃあもともとのジュノ監督の趣味というかテイストなのかもしれませんが、ともかくキョンシー映画という香港ならではのものと、清水崇の日本ホラーテイストも上手く嚙み合っていたような気がするし、ただ鬼面人を驚かす、というようなホラーではなかったように思う。
往年のキョンシーのどこかに笑いのある、おもしろテイストはまったくなかった。なかったけど、香港では本当に怖いものだというキョンシー、キョンシー映画を子供の頃から見ていたという監督ジュノ・マックの思いのようなものは感じられたような気がする。そして往年の映画が好きな人ならグッときてしまうかもしれない。
映像といい、怖い。
でも美しい。
古いもの、汚いものも美しいのが、怖い
妻も子も去り一人訪れた、寂れた灰色の団地。部屋の番号は2442。
ボロボロの部屋だけれど、彼は気にすることがない
生きる為に、来たのではなかったから
”13歳で家を出て16歳で映画に主演した
少なくはない数の映画を撮った”
キョンシー映画やアクション映画で80年代の映画スターの一人だった男。その後の紆余曲折といい、それはそのまま演じる銭小豪に重なっていく。
銭小豪はショウ・ブラザーズ(邵氏兄弟有限公司)出身の俳優で、最近はアクション監督としても活躍する銭嘉楽(チン・ガーロッ)の実の兄。弟がイカツイ顔に似合わずどこか愛嬌のあるタイプに見える一方、もうちょっとシュッとした感じのカッコいい小豪は、以前インタビューで見たイメージだとちょっと硬く、色々なことにとても敏感そうなイメージを受けました。
ジュノの上のインタビューを見ていると
チン・シュウホウはこの作品では悲惨な役を演じていますが、実際の彼は幸せな役者人生を送っていますからこれはもちろんフィクションです(笑)。
だけど映画を見てるとそんな風には全然見えない…もう生まれてこのかた苦いものしか食べたことのないような、痛々しく悲痛なまでに見える顔は、役者の力量かそれとも
『霊幻道士』の他のメインの2人はもう亡くなっているので、もしチン・シュウホウさんが亡くなったら僕の中のキョンシー映画は終わりだと思います。
こうして新しい映画は作られても、その持つ意味がまったく違うような気がする、そういう意味では、滅び行くジャンルの最後の一人という悲しさが感じられるからなのかもしれない。
でもそのかなしみの中に、ショウ・ブラザーズで鍛えられた身体は伊達じゃない、と感じる、思わず息を呑んだ後にブラボー!と拍手を送りたくなる、凄まじいシーンの迫力をしっかりと支える肉体の持つリアリティ。
そしてガウン翻して飛び込んでくるアンソニー・チェン(陳友)。なんてことだ、この映画では異常なまでにカッコイイ。いきなり容赦なしのバックドロップのせいなのか、年々大きくなったような気がする鼻と眼鏡のせいなのかわかりませんが、なぜか中島らもさんを思い出したけれど、
道士と呼ぶな。もうキョンシーだっていないのに…
そんなこと言ってるやさぐれ道士のかっこ良さに惚れ惚れ。
その他の人々も、クララ・ウェイの演技と存在感、「五福星」など往年の香港コメディでヒゲとアゴでお馴染みのリチャード・ンなど、歳月を重みを鮮やかに感じさせてくれて、最後の最後まで魅せられてやまない。
ジュノの愛情は確かに感じるけれど、
枯れた花はドライフラワーになっても、甦るわけじゃない
時間を止めたままにはしておけない…
それならなぜジュノ・マックはこの映画を撮ったのだろう?
そう思うと、もう予告を見ただけで泣けてくる。
予告も怖いの登場するので苦手な人は注意。
でも、予告からしていい。いい顔してる、だけど顔に頼ってない。ジュノ・マックがまた映画を撮ったら見たいなと思った。
なおこの「リゴル・モルティス/ 死後硬直」というタイトルは、映画祭公開用につけられた邦題で、公開時にはまた変わる可能性もあるそうです。念のため。
歌手でもあるジュノのMVも、これは本人の監督ではありませんが、やっぱり怖いこのテイストや色味とか、好みで味なのかなと。これも怖いから苦手な人は逃げてください。
このMVにも出てる蒼井空老師とそういえば映画も撮ってなかったっけ?と思って調べたら「復仇者之死」日本版も出てる。また見てみよう。怖いというか壮絶らしいけれど。
こちらの監督は「江湖」や「姐御」のウォン・ジンポー(黃精甫)のようですが、独特の色彩、映像の美しさという意味では、ジュノの監督作にも通じるところがあるような気がします。
復讐の絆 Revenge: A Love Story [DVD]
- 出版社/メーカー: アメイジングD.C.
- 発売日: 2012/09/05
- メディア: DVD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
関連する記事