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愛に関するすべてのこと

 

東京国際映画祭 | 愛に関するすべてのこと

 

All About Love 得閒炒飯 香港映画OST

All About Love 得閒炒飯 香港映画OST

 

 なんでOSTだけamazonに出てるんだろう…?

 

原題:得閒炒飯 2010年香港

監督:アン・ホイ(許鞍華) 
出演:サンドラ・ン(呉君如) ヴィヴィアン・チョウ(周慧敏) チョン・シウファイ(張兆輝)
ウィリアム・チャン(陳偉霆) ジョー・コク(谷祖琳)

 

桃姐の前に、勝手に一人でアン・ホイ監督祭り開催中に見ていた映画。
バイセクシュアルである二人の女性を中心にした、すべてではないかもしれないけれど、愛に関するいくつかの、様々なこと。

 

炒飯は食べる炒飯のことではなくて、台湾の俗語でメイクラブのことだそう。

得閒は

「而家得唔得閒?」日文怎樣說? - Yahoo!知識+

だから、時間(暇)があったらしよう、というようなタイトルとのこと。そんなタイトルの雰囲気のように軽快な調子に描かれていく。

 

DVや夫婦問題の相談を受ける弁護士メイシー(サンドラ・ン)は、相談に乗っているうちに顧客であるロバートと関係を持ち、妊娠したことに気付く。

妊娠に関するカウンセリング・コースを申し込んだ場で、青年というかまだ少年のような男と一夜のデートのつもりが妊娠してしまったアニタ(ヴィヴィアン・チョウ)と再会し、たちまちまたすぐに惹かれあう二人。

彼女達の妊娠を知って動揺したり、なんとか父親になろうとしたり…アタフタするような男性陣に、子供を引き取りたいと希望を持ったり、一緒にいろいろと考えてくれる周囲のレズビアンバイセクシュアルの仲間達。

ほぼ同時に発生してしまったような、恋愛と妊娠という問題の間で揺れ惑う二人に、アニタの勤める会社で解雇問題が起こり…

 

 

 

愛についての問題と、社会的な関わりなんかもあれこれ考えたりもするけれど、東京国際映画祭での紹介にある「軽やかな女と女の愛」という言葉が本当にぴったりくるような描き方に、見ているうちに自然と色々な在り方を思ってみたり、肩肘はることもなく見ていられた。

学生時代の初恋の相手だった二人が偶然再会した時、二人は共に妊娠中で…という話の行き着く先は、それぞれの相手の男性たちの描写といい、少々都合が良過ぎるような、良い話過ぎてファンタジックな気もしないでもなかったけれど

良い人ばかりじゃないというのが本当なら、悪い人ばかりじゃないというのもそれはそうだし。監督がそういう風に描いた映画でもあるんだそうなので、なるほど、一つの希望であれこういう形があってもいいんじゃない?という映画なのかもしれない。

 

二人が再会しまた始まってゆくシーンは映像といい、とても心ときめかせる、再会してすぐにもう離れがたいという恋情を感じさせる、とても恋愛映画らしくいいシーンだなぁと心から感じたのだけれど


それと同時に、個人の心情としてはそこで「めんどくさっ」とものすごく素直に思ってしまった。こういう感情は自分の中にはもうほんとにないんだなぁとしごく冷静にわかったのだけれど

 

何を言ってるのだ、そんなこと当たり前だろうと言われるかもしれないけれど、いやでも、そういうのは年齢や立場がどうこうで一様に決まるわけでもなし、当たり前とされてることも、当たり前ということになっている、というだけの話で

私自身はヘテロで彼女達のことがわかるのか?と言われたら、それはわからないな、と思うけれど、どんな形だからロマンチックで、素晴らしい愛で、祝福されるべきことで、そうでなければ…

というのは、やっぱりそれぞれの幸せが違うように他の誰かが決めることでも、決められることでもなし、と思ったのだけれど。

 

正直、好きとかよく見ていた、という人ではなかったけれど、あぁ正しくアイドルだったんだなぁ…とその引退になんとなく感じていたヴィヴィアン・チョウ。

ずいぶん騒がしく復活したと思っていたら、美魔女という言い方はどうなんだ…と個人的には思いますが、言葉はともかく、いやホントにただただもう、キレイだなーと
こんなにキレイで色っぽい人だったろうか?ともう、ちょっとポカンと見惚れるほどしっとりと美しい。

その吸引力にグッと引き寄せられてしまう。サンドラ・ンが演じるメイシーのアニタを見つめる目に、思わずうんうん、笑いながらも感情移入してしまう。

 

メイシーについて東京国際映画祭のサイトで

人と深く関わることを恐れている。

 

とあるけれど、確かにあの軽口ばかりたたいているメイシーの姿は自分に正直なようで、人とも自分とも深く向き合うことを恐れているようにも思えるけれど、

今まで軽やかに男女の間で生きてきたようなメイシーが妊娠と愛する女性との再開とを機に、いやでも迫ってくるような現実に揺れる姿は、一般的に言われるような母性神話であるとか、聖母的なものの姿とは違っているように思えたのも印象的だった。

なぜだろう?と思うのだけれど、女性の妊娠、出産ということになると、よくも悪くもその前後の話がどんなに違っても、とたんにステレオタイプ的なといおうか、よく似たような悩みや姿を見せられていることが多いような気もしないでもないもんな、そういえばと思ったり。

 

かたや一見夢か幻のような女、たおやかに見えるアニタのほうが意外と腹が据わっているというか、こう!と決めたら一徹というか…懐かしさだけでなく、今も求め合っていた相手に再び巡りあえたのはよかったけれど、愛を挟んで正反対のような性格の二人が、共に暮らし、生きていけるのか?

いつもの賑やかで面白がりで口の達者なサンドラが、逃避だったりレールに乗ることに抵抗してみたりしながらも、自分にとって何が大切か、気付いたり考えていく姿も自然で、あまり無理がなくてよかった。

 

 

ちょっとまとまりきってないというか、とっちらかったままの印象もあったのだけど、あんまりこう「何かを言いたい!」というタイプじゃない、そのままを映していくような監督だけに、裏目に出たのかな?という気もした

ちょっと消化不良も感じたけれど、複雑に考えてしまったりする題材を軽快に、日常の調子で描いている中で見えてくることもあり

雑然としながらも、多様に生きている、生きようとしている彼女達の姿から、人の為ではなく自分の為の自由と責任ということや、成熟を受け入れていくということも、感じられたような。

 

エンディングで二人の女の踊るタンゴに魅せられた。女と女のいいエンディング。

 

 

こういう小品も一般公開か日本版ソフト化してほしいなぁと思う。いつになるのか待ってられないよと思うことも多いのだけど、希望は捨てないでおこう。

 

《得閒炒飯》All About Love 電影MV 主題曲:李安琪〈You're the One〉

 

 

 

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