六月に雨が

You should take your umbrella.

来福の家

 

 

来福の家

来福の家

 

 

「好来好去歌」

大人になる季節なのかもしれない。少女で女で、器用そうで不器用で、頑なで、脆くて、柔らかで、固くて…そんな楊縁珠と
麦生、と縁珠に名付けられた男の子・田中大祐との、恋と愛。
日本語と台湾語と中国語が入り混じり、溶け合ったり、ぶつかりあったりしながら、違うこと、同じこと…しっとりと甘酸っぱく、せつなく綴られている。

 

そして、家族の、記憶の物語でもある。
タイトルにもなっている「来福の家」になると、より家族と記憶、台湾と日本の物語が色濃くなる。
日本で生まれた、あるいは小さい頃から育ってきた、台湾から来た一家、家族と娘達の物語。

 

名前、というのは、特に同じ漢字で違った読みかたのある国に暮らしていると、不思議な感じがするものかもしれない。
周恩来をシュウオンライ、毛沢東をけざわ・・・違うモウタクトウ、と習ってきた私は、けれどテレサ・テンを好きになって、ダンリージュンと、どのみちカタカナにしたらおかしいのだし、その発音がなっちゃいないのは私がすみませんだけれども、そう読むようになって、伍佰はゴハクさんではなくウーバイなのだけれど、それはともかく

 

縁珠のように「ようえんじゅ」と呼ばれることが、笑いたいのか泣きたいのかせつないのか腹が立つのか、それとも関係性や、呼ぶ相手の気持ち、あるいは呼ばれるえんじゅの心の中のことなのか…

複雑な思いをその胸のうちに抱えるものなのかもしれないし、歓歓と笑笑の姉妹のように、姉妹でも微妙に違う気持ちを持ちながら、それでも今は

かんかん、も、しょうしょう、も、すごく素敵な響き

 

そう言い合えたり、それぞれの色々があるのだろうか。

 

 

 

 

外国に暮らしたことのない私には想像するしか出来ないのだけれど

私は小さい頃自分の名前が好きではなかった。漢字一文字、というのもなんだか野暮ったく、それはからかいの対象にもなるものだったり

それが中国の、大陸から来た留学生の女の子に始めて自分の名前を中国語読みで読んでもらった時、なんだかとてもいい響きに聞こえて驚いたことを思い出す。

そのうえフルネームだと漢字三文字というのは「わかりやすくて良い」と彼女は真面目な顔をして言うのだった。

「日本人の名前(の字数が)多過ぎる」というのは、なるほど中国人ならではの感想なのかなぁと思いながら「これはちょうど良い」とニッコリ言われて、なんだか自分の名前がいいもののように思えたり
でも例:田中良 というのは 田 中良 ではないんだよ…とそこのところはやっぱり違っていたけれど
彼女に「阿良」(例)のように呼ばれるのは、くすぐったいようで、なんだか嬉しいことだった。

 

彼女が私と話をするようになったきっかけは、たわいもないといえばたわいもない、お正月の前に里帰りするのしないの…と皆が話していた時に「●●は…あぁ、でも、中国のお正月はもう少し後なんだよね。その時に帰るの?」とたまたま知っていた春節のことを私が言ったという、ただそれだけのことだった。

それだけのことで、彼女は私に中国のお守りのようなものや、テレサ・テンのカセットテープをくれたり、お喋りをするようになって、それは彼女の日本語力がとても高かったから出来たことなのだけれど、でも時々お互いの頭の上に???が浮かび、相互理解というのは真的很難だ…と思いながらも

彼女と話していると言葉が色々に広がるようでなんだかやっぱり楽しい思いをたくさんし、そんな彼女との縁も中国語という世界に引き寄せられた入り口だったと、懐かしく思い出したりしたのだけれど

 

 

 

私たちを惑わせ、混乱させ、そして豊かにする

 

推薦の文にもそうあったけれど、そうして、人と人とを結んだり繋ぐことも出来れば、壁にもなり、痛みも苦しみも悲しみも、生み、作り出し、ぶつけることも出来る「言葉」というものと

笑いと喜びと幸福の味もしっかりと豊かに味わった、3つの母語と「私」、そして家族の物語。

 

 

本というのも世の中にはたくさんあって、だから本と読む人にも縁というのがあるかもしれないと私は思っているのだけれど、台湾と中国語の話でもあるけれど、日本語で、台湾籍の日本の小説家の手で日本のことが書かれているこの本が

日本と中華民国という国との交わりが断たれて、中華人民共和国という国との交わりが結ばれて、パンダが来たのだった…という話に、実感も湧かないかもしれない世代の人とも、たくさんの縁が生まれるといいなと思った。

 

 

 

 

 

本の内容とは全然関係ないんだけど、台湾の歌。

 

 

 

新寶島康樂隊 有樂町人生(官方完整版MV)

 

ボビー・チャン(陳昇)と客家歌手の黃連煜とパイワン族(排灣族)の阿VONの3人のユニットが新寶島康樂隊。台湾語の歌もあるけれど、これは黄さんがボーカルの台湾客家語歌。客家語になると私が更に大問題だけど…

人生有苦有楽、と始まって、色々あるけどみんなでがんばってこう、みたいな人生の応援歌てきな歌だと思う(だいたいね)のですが、このボンボンてリズムと、

 WA DA KU SI DA JO 古 A NA DA 嘛 DA JO 古 山高水長 快樂人生

 

聴くと肩の力が勝手に抜けるDA JO 古(だいじょうぶ)のフレーズ。なんで有楽町なの?中文だと「~がある」は「有~」になるから「楽しいのが有る」町のようでいいなぁって楽しくなっちゃったのかは、知りませんが、聴くと私は楽しくなります、とりあえず。歌ってるのは黄さんと阿VONで、昇さんは自転車に乗ってるだけだけど。何してんの…?と思うけれど、楽しそう。