にゃんそろじー
猫、猫、猫で頭がいっぱいに。
夏目漱石の「猫の墓」から始まって、小説、エッセイ織り交ざったすべてが猫にまつわるアンソロジー。
漱石先生の冷静なようで、猫のようすを誰よりよく見、気にして、妻に伝え…返ってくる妻の反応に冷淡などと言う、情を滲ませないような静かで短い話と
まったく正反対のような、内田百閒の「クルやお前か」
猫の衰えていく様子、可哀想だという気持ち
ノラで懲りている。
そう言いながら段々可愛さの増してきた日々が連綿と綴られて、一滴一滴、滴るように情の湧いてくるような文。
師と弟子がともに猫について綴っている、その違いもおもしろく
最後に収録の、漱石の長女の娘・半藤末利子のエッセイ「漱石夫人は占い好き」まで読むと、夫人である鏡子をはじめ、漱石を取り巻いていた人間たちの人や繋がりも色々に見えてくるようで
星新一、筒井康隆はそうだ、そうだ、こんなだったなぁ。
金井美恵子のこれは初めて読んだけれど、当たり前かもしれないけれど、金井美恵子だなぁ、保坂和志もとても保坂和志だなぁ、と。
宮沢賢治の「猫の事務所」は、昔はこの”主に、猫の歴史と地理を調べるところ”の猫の書記たちの姿、ようすを思い浮かべては、かわいらしかったり、かま猫がかわいそうで仕方なかったりしたような覚えがあったけれど
今読むと、擬人化しているんじゃない、人を猫になぞらえているんじゃないか…現実的にせつない話だ。
それぞれにとても”らしい”気がする作家の個性も楽しく
幸田文の、本当に短いけれど、猫との暮らしに自分を省みて思う話と、その娘・青木玉の「ネコ染衛門」も、また対のように思って読んでしまったけれど
吉行理恵の「雲とトンガ」がとても印象的だった。
発表時は「兄の影」というタイトルだった、と最初に書いてあったからかもしれないけれど、兄妹猫の話が小説なのかエッセイなのか…どちらにしても読んだことのなかった作者の、夕暮れに長い尾を引くような影を、話の中には書かれてはいない姿もチラチラと見えてくるようで、人と人との間のせつないものが残る。
光野桃の「猫」になると家族そのものの話で、選者である中川翔子の「解説にかえて」では、しょこたん自身の血族と猫との話が書かれているけれど
猫は家族とわざわざ言わなくても、共に暮らす生き物の話が同じように暮らす人の、家族の話になっていくのも、当たり前のことなのかもしれない、と思えたり。
「解説にかえて」では、中川翔子の母方の祖母の叔母だという、松本恵子という人の「随筆 猫」の抜粋が紹介されていて、まさに読んできて思っていたとおりのこと、頭の中が猫、猫、猫でいっぱいという『私の頭の中にいる猫たち』という話だったのに思わず笑ってしまったけれど
猫を見るのもイヤという人には、だから無理かもしれないけれど、そこまでではないのであれば別に猫好きではなくっても、猫という生き物を通してやっぱり人が様々に感じられる、読んだことのあるの、ないの、色々な作家にも一時に触れられる、人間もようも楽しい本じゃないかなと思った。
村上春樹の猫の話は最初「なぜこれを」と一瞬思ったけれど、でもアンソロジーの中で見ると収まりがよく、これでいいんだなぁと、あらためて読んでよかった。
しょこたんの文章に、いや猫、犬、何が好きであろうと、人は人で、人の悪い良いとそれとはまた別の話では?とその一点だけはちょっと同意しかねるけれども、選はとてもいい、バランスもとてもとれた、読みでのあるアンソロジーだと思う。
猫といえば
- 作者: 大島弓子
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3まで読了。2では大島弓子自身の闘病のことも細かに書かれていて、病状にもよるけれど病院っていうのもやっぱり様々なんだなぁとあらためて思ったり、猫との暮らし、生き物との生活ということでもどんどんすごくなっていく。続けて読んでいきたい。
南方熊楠…ってどんな人だったっけ…?…確かに奇抜な逸話も多かった、とは思うけれど、あまりの水木節のようでもあり、わからなくなってしまった気もするけれど、妖怪のような人の描く怪人・猫楠の生涯、出会う怪猫や、怪異、怪人物もいちいち楽しく、おもろうてやがて…と世の無常を感じるような話で、よかった。
ただ、野生児というか野人のような猫楠、歌うは猥歌、常にマルダシ。
前に読んだこれもおもしろかったです。
- 作者: 万城目学
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にゃんそろじーに収録されている「猫について喋って自死」ではじめて読んで、おもしろかったので、購入したまま積読になっていたこれもちゃんと読もうと思います。
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