六月に雨が

You should take your umbrella.

阿怪

 

 

 

時々ご飯を作っていて明らかに量間違ってる、間違ってるなぁ、と分っていながらどうにも止まらないことがあって先日はいなり寿司をついてんこ盛りにしていました。祭り?祭りなの?と思うほどいっぱいのいなり寿司…食べるの一度に2個、がんばって3個が限界だというのになんでこんなに作っちゃうんだろうなぁ…やっとなくなるといつもそう思うのに、きっとまたそのうちテーブルにいっぱいのコロッケとかやってしまうんだろうなぁ…なんだろうこれは…*1

 

そんなことはさておいて香港の歌。

イーソン・チャン(陳奕迅)はもう長らく香港の男性トップシンガーになるんだろうか

香港を代表し続けてきた彼の、でもこれは広東語の曲ではなく、港台では国語と呼ばれるマンダリン標準中国語による曲。

昔うちのじーちゃんなんかは北京官話という言い方してたような、日本でいういわゆる中国語は北方の中国語をベースにしたものということのようだけど

同じ言葉で歌っていても、大陸、香港、台湾、それぞれに全く違う個性があるような気がするけれど

 

 

 

陳奕迅  阿怪

 

阿~、阿星とか阿梅とか、名前の一文字の前に阿がつくのは日本でいえば~ちゃん、とかのような親しみを込めた呼び方。阿武だったらタケちゃん、とかタケぼう、とか。

怪はでも名前ではなくあだ名*2、可笑しいではなくて奇怪なほうのおかしい、おかしな奴、変わった人、くらいのニュアンスかと思う。

 

僕らは彼を阿怪って呼んでる 彼が一番多く言う言葉は「バイバイ」

じゅうぶんお金を稼いだらすぐ離れて 生活できなくなるまでいたらまた戻ってくる

阿怪はホテルに住んで 永遠に自由に旅してまわる準備

持ち歩けないものを彼は買わない

阿怪はすごく格好良くて 女の子は一目見たらポーっとなるくらい

でも彼と誰かの恋の話は聞いたことがない

 

阿怪はいつも

時が過ぎるのが早過ぎて ウラル山脈にもまだ行ったことがなければ ツンドラを見に行くのにも 一つの花がどのように咲き誇るのかを見るのにも間に合わない

そう言っていて

彼には彼の未来がある 僕らが学ぶことはない 誰が学べる?

僕らは選択の年代を生きている 僕らはとても努力して輝いて生きる

僕らは自由自在 未来を選択する 僕らは選択する 阿怪にならないことを選択する

 

彼はほんとにほんとにほんとにとてもおかしい 恋愛してる時間がないって言う

 

バイバイ

 

と終わる歌。

 

作詞は林夕。

林夕の書く歌詞によくあるように、歌詞の文章としての意味はだいたいわかる(と思う)んだけれど、それで何を言いたいの?か、考えてしまう。

いわゆる流行歌、意味を考えさせるのもテクニックの一つなのかもしれないけれど、多くの歌手に提供した多くのヒット曲を持つ作詞家だけれど、イーソン・チャンと組んでいる時の林夕の歌詞には、歌の向こうに林夕の姿がより浮かんでくるような気がしてしょうがない。

ちょっと背中を丸めてじっとどっかを見ているような私の中の幻の林夕。

 

 

 

陳奕迅 Eason Chan《謝謝儂(國)》Official 官方完整版 [首播] [MV]

 

 

ありがとう=謝謝のより丁寧な言い方が謝謝你。ありがとうございます、のようなものだけれどシェシェノンはその上海語発音。なんで上海語なのか?は知らないけれど歌詞そのものは国語(標準中国語)

これは何の歌かといえば…偏頭痛の歌?

ともかく偏頭痛で

ベッドの上で動きたくもなくて 画面の顔を見てると ある見知らぬ人が一分にも満たない時間現れて 

彼は顔いっぱいに笑みを浮かべて 平凡な夢に生きる姿を演じていた
彼の名前も彼の生活が平凡なのか非凡なのかも 誰にもわからない

僕の偏頭痛につきあってくれた見知らぬ人に感謝
海を越えて笑顔を連れてきてくれた
寂しい世界の中でぼくの大英雄になった
彼はじゅうぶんに僕を感動させた 彼が人気者かどうかなんて何の関係がある
彼は自分の使い方を知ってる 彼が貧乏かどうかなんて誰が気にする

彼の過去 彼の未来 成功するのかどうかなんて 誰にもわからない

彼の頭が痛かろうと痛くなかろうと ある人のこんな努力を 僕はただ光栄に感じる
僕の頭がまた痛くなるかならないか じゅうぶんに生きていければ何も怖くはない

苦痛を言っても誰にもわからない 僕が何を思うか誰にもわからない 

誰も賛美する人がいなくても 感動する人はいる


有名じゃない俳優は観客がいるかどうかなんてかまわない 

ありがとうございました。

 

 

ノリのいいイーソンらしい曲の向こうに、なんとなくだけどいかにも偏頭痛持ってそうな林夕の顔がやっぱりどうしても浮かんできてしまうんだけれど…何がありがとうございました?なんだろう?

 

 


100毛 - 封面相片 | Facebook

 

色んな方が色んな方に扮している表紙も見所の異彩を放ちつづける

香港の雑誌100毛 http://www.100most.com.hk/

の表紙でジョシュア・ウォンくんに扮していた林夕先生の姿を見ていると、で、おかしいのは阿怪のほうなの・・・?と問い詰めたくなってしまったり。

 

 

だからどうしたということでもないけれど、そんなことをふと考えてしまうので、どなたか林夕作品集(完全訳つき)でも出版してくれないかな?と思う。

流行歌の世界では逆に考えさせないというテクニックというのもあるんだろうと思うんだけれど、ほらこれ以上アホになると困るから。

たかが歌謡曲、されど歌謡曲。あれやこれや考えてしまうような気がする余地があったり、その時々の林夕が言いたいことみたいなものがほのかにしてくるように思ったり

語学力(も大問題だけど)以上に謎があるようでそれを考えるのは楽しいことでもあるんだけど。

 

 

どこかで香港楽壇という言葉があったらまるで対句のように「だから香港に楽壇はない、あるのは娯楽圏だけだと…」と必ず誰かが言っていて

確かにシンガーソングライターやバンド、創作音楽というのが、どうしてだかなかなか根付かない育たない光が当たらないと言われていた香港。

でも別に林夕だけに限らず、チームプレイのように互いを引き出しあって作り出して

歌われてないことにも思いを馳せてしまうほど、その歌の良さを表現して広げることができる力、香港の歌手の優れた歌の力というものは確かにあった

そんな系譜にイーソンも確かに連なる一人だったと思う。

他に担い手が出てこない中、一人背負うのはずいぶん重かったかもしれないけれど。

 

 

香港の歌手で誰を聴いたらいい?と言われたら間違いなく最初に陳奕迅というだろう。

全体がトーンダウンしてるのはどこも一緒でだから彼に限らず盛り上がりは減っているけれど、その分過去作で黄金期のイーソンにじっくり浸ればいいんじゃないかなと思う。(itunesでもなんでもいいんだけどこれはそういう話じゃない)

女性歌手なら、実質トップはずっとジョーイ・ヨンだったのかもしれないけれど、申し訳ない個人的には好みでなくきちんと聴いたことがない。

この辺りの年代ならミリアム・ヨン、デニス・ホー、それからケイ・ツェなどが個人的に好み、いい歌歌ってる、一つの曲でも聴くたびに良くなってるような気がする。

 

 

近頃はまったく毛色の違うような色々おもしろい人もたくさん出て、ずいぶん様変わりもしてきたような気がするけれど

色んなものごとが変化して、イーソンにだって変化はありまたこれからも変わっていくこともあるかもしれないけれど、そのぶんもう余計なものは背負わずにイーソンらしく楽しんで歌と遊んで、イーソンの歌いたいように、歌いたいと思う限り歌い続けていってくれたらいいなぁと思う。

 

 

 

最近の色々な変化の中でおもしろいなと思った人たち。

試聴も出来るみたい。


Amazon.co.jp: 給親戚看見我一個人食吉野家: My Little Airport: デジタルミュージック

 

amazonにデジタルとはいえあったのもビックリだけれど、「私が一人で吉野家で食べてるところを親戚に見せてあげたい」なんちゅうタイトルや…と最初に思っていた歌。でもなんていうか、今だなぁという気がする。

 

同い年くらいで子供の頃一緒に遊んだ親戚が吉野家で持ち帰りしてるの見て
彼に奥さんがいる、家庭を持ってるのを今日知った

長いこと親戚と会うのが少し怖かった
私が一人で吉野家で食べてるところを見せてあげたい
そうしたらもうこれから他に何を怖がることがあるだろう?

 

親戚だの血縁は香港というか中華圏のほうが圧が強いんじゃないか(個別に差はあるだろうけれど全体的には)と思うけれど(あと狭いし会っちゃう)でも通じる所あるような…

アドミラルティのステージではF××K you と689に歌ってたMy Little Airport は香港のポップデュオ、映画の主題歌なんかも歌ってた。

 

 

《金雞sss》主題曲 - 《美麗新香港》by my little airport

 

可愛らしい歌声、爽やかな曲に思えるけれど、主演はサンドラ・ンで張家輝はその昔馴染みのお兄さん、返還前に入っていて久しぶりにシャバに出てきた彼が香港の変化が理解出来ずついていけなくて、新天地を求めて香港を去っていこうとする…喜劇だけれど笑うに笑えない話に

この世界にあるのはただの郷愁
あなたがいなくなってから
この香港はもう私の場所じゃない

這香港已不是我的地頭, 就當我在外地旅遊…

と歌われると、泣いたらいいのか笑ったらいいのかわからなくなったけれど

 

あとこの間から平気で電車に乗ってたり街中で「写真撮って!」と言われて絶対にノーと言わない気さく過ぎる俳優のチョウ・ユンファが人気沸騰していて「みんなが野性のチョウ・ユンファを捕獲!」と報道されていたりで「私もファン、いつかユンファを捕獲したい!」って自作の曲も話題になっていた一人バンドのthe pancakes さん。

 

 

the pancakes《還錢還錢還錢》 

 

こっちはもうコテコテの広東語(口語)でさすがにわからない、hihi、ってなに?なんか悪口なんだろうなぁ…と思うけれどとりあえず

いっつもお金ないと言いながら煙草を買うお金はあるらしい相手に、私毎年誕生日も新年も願いごとにしてる、言い過ぎてみんながおかしくなるほど言ってる、返したらあなたは男前だ、10年も返してもらうの待ってるんだけど?と「金返せ」とタイトルだけでも3回も言ってるよう。

このふにゃふにゃっとした歌声で、言ってることはけっこうな感じが噴いてしまう歌だけれど

 

 

香港のガールズバンド(?)は舌足らずな可愛い歌い方のようで、けっこうストレートに身の周りや社会や今のことを自弾自唱しているのも昨今なのかもしんない。

 

 

 

*1:料理が特別好きなわけじゃないただおあげさんを煮て酢飯握ってつめて…って単純作業?してるとなんか楽しくなっっちゃってどんどん作り続けたくなる…ハイになっちゃうのかもしれない。

*2:だと思われる。日本の感覚からするとビックリするような、サンフランシスコで生まれたから振藩(サンフランシスコの中文表記)だとか香港で生まれたから港生だとか、あるいは縁起の良い言葉、福や富や栄は名前にもよくあるけれど、逆に言うなら縁起の良くないような言葉とか変わった言葉の名前はあんまりない気がする。