34th香港フィルムアワード 雑感。
19日に開催されたThe 34th Hong Kong Film Awards 第三十四屆香港電影金像獎(香港のアカデミー賞とも呼ばれる映画賞)の覚え書きメモ。
公式サイトはこちら。まだ去年の動画や内容のままだけれどそのうち今年のに更新されるでしょう。
yahoo香港電影の特設タンブラー
Yahoo HK 電影 - 第34屆香港電影金像獎特輯 より受賞作品・受賞者一覧
今年の最佳電影ベストフィルムはアン・ホイ(許鞍華)監督の「黄金時代」、最佳導演(最優秀監督賞)など計5冠。
最佳男主角(最優秀主演男優賞)は「暴瘋語」と「竊聽風雲3」の二作でノミネートされていたラウ・チンワン(劉青雲)
最佳女主角(最優秀主演女優賞)は「親愛的」のヴィッキー・チャオ(趙薇)が受賞した。
影帝と影后の受賞後の姿、ラウチンのインタビューなど香港アップルデイリーの動画記事。
恭喜恭喜、いつも通りの落ち着いた様子だったけれど可愛らしかったアン・ホイ監督はじめおめでとうございました。
今年の司会はラム・ガートン(林家棟)とジョーダン・チャン(陳小春)にミリアム・ヨン(楊千嬅)のフレッシュな三人。…もうベテランだけど金像獎の司会としてはそんな新鮮さを感じてほしかったのかな?という気も少し。
誰が司会でも台本通り(と思われる)やり取りが、会場をひんやり冷やしきって時に凍りついたような観客席も金像獎という気がするけれど
そんな会場の空気をいっぺんにホットにする(こともある)のは、各賞のプレゼンターのみなさんかもしれない。
それぞれ華々しい男優と女優のみなさん等がプレゼンターとして登場する中
今年も凄みすら感じる”ニヤリ”と表現したくなる笑顔で、悪いけどいい顔をしてけっこうなことを言っていたのはやっぱり最優秀監督賞のプレゼンターだった秋生さんことアンソニー・ウォン(黄秋生)のようだった。
「袋住先」のほか、unfriend話や
「我要真...係做司儀!」
「私は本当に…司儀(司会・MCなどの意)をしたい!」と
「我要真普選」(真の普通選挙を求める雨傘運動のスローガン)にかけてみたり。
それに一番楽しそうにゲラゲラ大笑いしていたのは田鶏ことティン・カイマン(田啓文)(少林サッカーの鎧の肌の人)だったかもしれない。
でもカイマンは何が楽しいのかずっと「ハッハッハッ」と大笑いの声が聞こえてきそうなほど楽しそう、終始よく笑っていたような気もするけれど。お元気そうでなにより。
「袋住先」の解説はこちらのページに詳しい。
香港政治キーワード解説--第79回 「袋住先」(とりあえずもらっておく)
unfriendは政治的な考えの違い等からfacebookなどSNSサイトでフレンドをやめる、という現象が流行語のようになっていた言葉でもあるけれど、ある映画監督もそういえば秋生さんたちに対してunfriend宣言をしていたっけ…というような話。
それはともかく、今回受賞の涙が初々しく思わずええいああともらい泣きしそうになったのは、最佳新演員(最優秀新人賞)と 最佳女配角(最優秀助演女優賞)をダブル受賞おめでとう!のイヴァナ・ウォン(王菀之)
アップルデイリーの報道にある写真だけでだいたい見当つくかもしれませんが「金雞sss」での”つけ前歯”をつけた恐怖のミニーちゃんみたいな強烈なキャラクター、パーティーの席から残った食料持って帰るたくましい大陸なまりのお姉ちゃん、と見せて実は…というちょっと意外性のある役で大活躍していたけれど、そんな強烈な印象とはまったく別人のように、キレイなメイクやドレスアップだけでなく、その声と話しかたの上品で美しいこと。
名前を呼ばれてステージに上がる前に振り返って深々と一同に礼をしていたのも、礼儀というより、映画界の先輩諸氏に対して敬意を表しているようで印象的だったけれど
最優秀助演女優賞の時には自分でも本当に驚いていたらしく、何を言っていいのか本当にわからないといいながら涙ぐみながら
でも丁寧に感謝と喜びを懸命に伝えようとしていた姿は、この場に立てたことに本当に感動し誠実に受けとめているようで、
プライベートでは友人だと言うけれど、同賞にノミネートされ受賞を逃したフィオナ・シッ(薛凱琪)ももらい泣きして涙を流していたのもわかるような気がした。
新人賞の時には準備していたのか、焦りながらも胸元からメモを取り出すと、
「私知ってるわ、まずプレゼンターの先輩たち、スー・チー姉さんとトニー・レオン兄さんにありがとうを言わなきゃ」と焦りつつ言っているのがまだテンぱってるのに一生懸命で可愛らしく
それに「そんなのいいわよ」と前に集中しなさいと手振りで示してあげていたプレゼンターのスー・チー(舒淇)もほんまにええ子や、いい先輩だった。
今回新人賞にノミネートされていた三人が三人とも女優だったのには、あら男優は?とちょっと思ったけれど
今後の活躍が期待出来そうな人が受賞していたのは嬉しいこと、これからも活躍し続けて、いずれは今回感謝の言葉を捧げていた「金雞sss」主演女優でプロデューサーでもあるサンドラ・ン(吳君如)のように次世代を担う人になってほしいなと思った。
その「金雞sss」で最優秀主演女優賞にノミネートのサンドラ・ン(吳君如)は惜しくも受賞はならず、でもこんなの受賞していたそう
今回はプレゼンターのみで賞に関係ないからかずいぶんリラックスムードに見えたトニー・レオン(梁朝偉)さんと「最優秀衣装賞」だそうです、おめでとう…でいいんだろうか?
とにかくキレイだったサンドラ。
自分に何が似合うかよくわかってる感じ。スタイルも一度痩せてから維持し続けていて立派。
サンドラとの間に一女をもうけているパートナーであるピーター・チャン(陳可辛)監督の「親愛的」に主演のヴィッキー・チャオが最優秀主演女優賞を受賞したけれど、でもそれを複雑に思うほどには、申し訳ないけど前作や前々作の「金雞」「金雞2」ならともかく今回の映画ではちょっとはなから可能性はそれほど高くなかったんじゃないかと思う。
「金雞sss」は2014年度の興行成績一等賞だったそうで、今年2015年も無事に正月映画「12金鴨」が制作公開出来て何よりだと思うけれど。
今回の最優秀主演女優賞にノミネートされた中で期待が高かったのはたぶん「雛妓」の主演でツインズのシャーリーン・チョイ(蔡卓妍)だったかもしれない。
若い、とはいえもうベテランだけれど、映画での今後の活動を見据えたような大胆な挑戦に、既に日本の大阪アジアン映画祭でもコンペティション部門で上映され、主演のシャーリーンがスペシャルメンションを受賞していることが香港でも報道されていたけれど*1
ツインズの映画から始まって経験を積み大きく脱皮した今、影后として認められることは、本人にはもちろん、これからの希望にもなるんじゃないかということと
香港現地の女優でみんな納得のノミネートだったということもあって、期待も大きかったのではないかと思ったけれど
結果にトーンダウンしたような話も見かけたりしたけれど、内容は両方ともまだ未見だしなんとも言えないけれどもさ、でも受賞したヴィッキーのノミネート作品の紹介時に起こっていた拍手は、あの映画での彼女の演技に送られた拍手のように個人的には感じた。
監督はピーター・チャンとはいえ主演はホアン・ボー(黄渤)とヴィッキー、アン・ホイ監督の「黄金時代」もつい「お湯さん」と呼びたくなるタン・ウェイ(湯唯)主演で国語の映画だそうで「香港映画なのか?」という意見も見かけたけれど
現地の人の感情はわからない、自分が本編を見てどう思うかもわからないけれど
でも今回の受賞はさまざまな考え・意見はあっても、結局今回ノミネートされた中で彼女の主演が一番よかったから、という公平で正当な受賞であると信じたいと個人的には思う。
移り変わりはあっても香港映画らしい映画が好き、見たいと思う、でもどこの誰が、というより
学べば出来る、というものでもないかもしれないけれど、香港映画を輝かせてきた監督や俳優たちに学校や映画会社、テレビ局の養成所など、学んで経験を積み身につけることの出来る場所はあったように
香港にも再びそういう場が出来るといい、そしてもう席がいっぱいになるくらい有望な人が出てこい、そうなるようにぜひ何とかがんばっていただきたいと思うけれど。
元々音楽家、シンガーソングライターで才能のある人のようだけれど、そんなやや新人不足も感じる中、一気にダブル受賞という形で、その受賞に相応しかったと思うイヴァナ・ウォンの受賞は小さいけれど一つの光のような気がした。
コメディエンヌの活躍や喜劇映画というのも香港映画の伝統の一つでもあると思うし。
もう一人拍手を送りたく思ったのは、最佳原創電影歌曲(最優秀オリジナル映画楽曲賞)を受賞した歌手のほうのアンソニー・ウォン(黃耀明)。
「セーラ」(原題:雛妓)などとともに大阪アジアン映画祭でも上映されたパン・ホーチョン監督作「アバディーン」(原題:香港仔)の主題曲。
本作の受賞はオリジナル曲賞のみだったようだけれど、正直Tat Ming Pair 達明一派の頃からどうも苦手…だった黃耀明だけど、この曲はノミネートされていたのを一目、じゃなくて一耳聴いて、あらいいな、と思いました。
なんだろうイントロからパン・ホーチョンの映画っぽい、おいおい何が起こるんだと思う不穏も感じる音、でもそこにかぶさるように明るいメロディーが乗り、今の希望も感じるさせるアンソニーの歌声がいいなと思った。
映画「香港仔」の主題曲「目的地」
黃耀明《目的地》(巴福斯影業發行電影《香港仔》主題曲)
ついでのように今年のサンドラの映画「12金鴨」のトレーラーも。今作でもイヴァナ・ウォンも大活躍のよう。
ただ、ちょっと俗っぽい映画、表現だと思うので、苦手な方は要注意。
《12金鴨》終極預告 12 GOLDEN DUCKS final trailer
この「12金鴨」で主演女優のサンドラ・ンが演じているのは男性でホスト。
阿金の続きはもう無理、でもこの路線はまだ手放すにはもったない、だったら…と考えるだけでなく、自ら話題の種にもなりお客さんを呼び込もうというその姿勢は大尊敬してしまう。
柳の下にどじょうがいなけりゃ自分で作る。もしくは自分がどじょうにもなる。香港精神万歳!
ただ、サンドラは彼女をぜんぜん知らない人が見れば、男性に見えるんだろうか?
サンドラは男装の女親分役が当たり役だったり中性的な姿は見慣れている気がしていたけれど、個人的には特殊メイクにけっこうな予算をかけて男性になったというサンドラに、不思議なものを見てるような気がした。
イヴァナ・ウォンはamzonでも検索したら音楽いっぱいあった。名前は聞いたことがあったけれど歌聴いたことなかった、でも今回の授賞式で話していても、心底驚いたほどきれいだったあの声に、また歌も聴いてみようと思った。
張繼聰 王菀之 -《生命之花》合唱版 Official MV
Ivana Wong Live Concert 2014 (Blu-ray)
- アーティスト: 王菀之(イヴァナ・ウォン)
- 出版社/メーカー: East Asia Music
- 発売日: 2014/11/10
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*1:スペシャルメンションて何?何の賞?と思ったけれどこういうことだそうです スペシャルメンションとは何か|PFFディレクターBLOG
*2:Yahoo HK 電影特設Tunblerの一覧だと”最佳原創電影音樂”(オリジナル映画音楽賞)…と記載されているけれど、映画音楽賞のほうはフルーツ・チャン監督の「那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅VAN」の盧凱彤と李端嫻が受賞しているもようで誤記かと思われる。