六月に雨が

You should take your umbrella.

傷心的歌

 

 傷心の歌ですが、映像はせつなくも爽やか。

 


周華健-傷心的歌(劇情版) (官方完整版MV) 

 

”忘れるすべはない 

いらない いらない いらない 僕はあなたと夢で会いたくはない

忘れられるのは眠りに落ちた時だけ、ただ僕はあなたと夢で会うのが怖い

忘れるすべはない…”

繰り返されるリフレインの切なさ。

正に傷心の歌だけれど、悲しいだけではなかったから傷つき、忘れられないのだと思う。眩しい、失われた季節の輝き。

周華健の歌だけでも透明感のある悲しみに、彼ら二人の物語が、これはもうなんでしょうか?と思うほど切なく、トニー・ヤン(楊祐寧)とファン・チーウェイ(范植偉)の瑞々しい青さは、なぜかいつも夏の夜明けを思い出させる。身勝手なその時の気持ち次第で、様々なことを感じる夏の早い夜明け。

 

 

ニエズ(孽子)など台湾のドラマ監督のツァオ・ルイイェン(曹瑞原)が監督したMVで、動画の舞台は現代だけれど、挿入される制服姿はニエズの舞台である70年代のもの、ドラマそのものの映像も所々使われている。

 

ニエズ~Crysral Boys~ DVD-BOX

ニエズ~Crysral Boys~ DVD-BOX

 

 

同じくファン・チーウェイが主演でトニー・ヤンも共演の、70年代戒厳令下の台湾を舞台にした同性愛者である若者・李青とその家族や周囲の人々の物語。

まだ阿青が幼い頃からの、家族史のように始まるドラマは一見重苦しく、古くさく感じるかもしれないけれど、一話から、一本の映画を見たかのように人々の生きる姿が胸に迫ってくる。

ベテラン俳優・柯俊雄が演じる、退役軍人で今は不本意な生活をしている父親の、ただ理不尽なだけではなく、鬼気迫るような激情も露に息子を罵り追い出した、その後の姿、表情からも、彼自身も異郷に放り出されるように生きていることの孤独や、やるせなさが伝わって、裸足のまま走り出す阿青の淡々としたモノローグと重なって、父子の悲しみが響いてくる。

もう互いしかいない家族が失われていく時までをじっくりと語っていることで、この後ドラマで描かれていく、理解と無理解ということがより感じられた気がしました。

 

ドラマは阿青を中心にしたドラマだけれど、MVを見ていると、ドラマの中では生まれ育ちは全く違っても親友であった趙英(トニー・ヤン)の側からの物語のように思えます。

友情から始まった関係の中でしだいに惹かれあい、意識しあっていた二人の少年。阿青の弟が死んだ夜噴出した悲しみにすがるように趙英を抱きしめたことから、コントロールの効かないものになり、でもただ目の前にいた人に心が動き、惹かれた。それだけのことが取り返しがつかないほど阿青の人生を変え、趙英もまた阿青に取り返しのつかない言葉をぶつけてしまう。

時代も人も幼かったのだなぁと、ごまかすことすら出来ずに、学校を家を追われる阿青に悲しく思うのですが、趙英の胸にもあっただろう悲しみと後悔、ドラマ劇中でもやがてそれを伝える場面が訪れるのですが

ドラマを見てからこのMVを見ると、現代に舞台を移し、趙英の自分を責める心がようやく解かれ、阿青の笑顔に、二人が失った時間と心を取り戻していくようで救われたような気になります。

 

 

始まりは一見ホントに2003年のドラマと思えないくらい、まるで軍服のような制服に身を包んだ少年達、車が走るだけで土ぼこりが上がる道路、台風が来れば家族総出で窓に懸命に板を打ちつけている中で、停電が起こり…

そんな生活は、見たことのない人には信じられないほど昔の話に思えるかもしれませんが、まぁ確かに昔だけれど、日本もそれほど差のない時代にこんな風景があり、部分だけを見ればそれこそ「信じられない!」と目を三角にさせてしまうかもしれない阿青の父親のような人々も確かに存在していたように思います。

 

 

 

しかしあちらのウィキぺディアを見ていると

孽子 (電視劇) - 维基百科,自由的百科全书

在網絡上卻引起莫大迴響,大量同人誌作品出現,將兩人的故事繼續發展下去。

”ネット上でありえないほどの大反響を引き起こし、大量の同人誌作品が出現し二人の物語は続けられていった”

あぁ…

これほんといいドラマだけど、重厚でシリアスでとてもそのようなことを思いつけるとは夢にも思いませんでした。すごいな。

 

 

 

余談ですが疲れ目か夏ボケか、ブックマークするつもりの記事で言及していたほうのブログにブクマしてしまったりしていました。以後気をつけたいと思いますとここでご報告しておきます。