六月に雨が

You should take your umbrella.

画皮 あやかしの恋

 

画皮 あやかしの恋<劇場公開版> [DVD]

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真実の愛を問う、美しく儚い怪奇ロマンス! !
人の心臓を喰らう美女が狙ったのは、愛する男の心だった―。妖魔VS降魔師! アクション満載の感動エンタテインメント大作! !


秦から漢にかけての時代の中国。将軍・王生(ワン・シェン)は合戦の最中、捕らえられていた若く美しい女・小唯(シャオウェイ)を救出する。彼は妻・佩蓉(ペイロン)に事情を話し、身寄りのない小唯を屋敷に住まわせることに。しかし、小唯は人間の姿をしたキツネの妖魔だった。人間に恋をした美しき妖魔と、“あやかし"に魅入られた夫の身を案じる貞淑な妻。妖魔と人間との間で渦巻く、深く悲しい愛の結末は―。

原題:畫皮  2008年

監督:ゴードン・チャン(陳嘉上)

出演:ジョウ・シュン(周迅)ヴィッキー・チャオ(趙薇)ドニー・イェン(甄子丹)チェン・クン(陳坤)スン・リー(孫儷)

 

ホラーというか、チャイニーズ・ゴースト・ストーリーなどと同じ「聊斎志異」の中の一篇を元にしたという怪異譚。「画皮 千年の恋」というドラマ版も、映画公開前に日本でも放送されていたけれど、美女の皮を被った狐の妖怪ほか美男美女が登場し、ドニーさんが暴れまわる痛快アクション…と派手で華やかなようで、ジリジリと男女の心理が描かれていって、最終的に仏教的な感じに決着がつく…というちょっと不思議な映画だった。

 

純粋過ぎて怖いような美しさのジョウ・シュンの妖狐。対照的にしっかり地に足の着いた存在感のヴィッキー・チャオの貞淑な妻。若いころのアラン・タムをちょっと思わせる、キリッとした美貌のチェン・クン。愛に破れ半ば捨て鉢のようで、カッコいいドニーさんの勇哥。男勝りの妖怪退治の娘スン・リーも「宮廷の諍い女」スゴイ良かったんだけど、本来的なイメージならこっちのほうだったのもあって、よかった。

 

 

嫌な話である。映画がではなく、佩蓉(ヴィッキー・チャオ)にとって。夫・王生(チェン・クン)が戦場から救い連れて帰ってきた身寄りのない娘・小唯(ジョウ・シュン)は、本当は人の心臓を奪うことで人の姿を保っている狐の妖魔。けれど男達はもちろん、誰もが疑うことなく魅せられて、惹かれていく。

疑いを抱くほうが人間性を疑われそうな、一見可憐で無垢な娘。初めは佩蓉にも「お姉さん」と甘え懐き、人前ではあくまで分を弁えた態度でいて、どこにも疑う隙はないようで、何かがおかしい。

なぜ、あんなにツンケンと怒っていた女が、小唯にジッと目を見つめられると、魅入られたように従うのだろう?なぜ、佩蓉が誤って切ったはずの小唯の傷は、次の瞬間、何事もなかったようにふさがっていたのだろう?

小唯が来てから、町では心臓を奪われ殺された遺体が毎夜のように発見され、ギシギシと町の人々の心も軋んでいく中、徐々に募っていく違和感。

そして小唯の王生を見つめる目。他の誰にも分からぬように、チクリ、と佩蓉の心にだけ針を刺していく。

怪しみおかしく思えば、嫉妬かと責める目に、混乱していく佩蓉。嫉妬がないかと言えば嘘になる。けれど嫉妬以上に不安、心配が募って、町へ戻ってきた旧友であり自分を慕う男・龐勇(ドニー・イェン)より他に、信じてくれる人も頼れる人もいない。いつの間にか、孤立無援にされていた佩蓉に、とうとう「王生を愛している」としおらしく訴える小唯と、揺れる心を隠して「王夫人はただ一人だ」と言う王生…夜毎、王生の夢に小唯が現れるのは彼女が妖だからか、それとも…

 

 

ドラマ版ではちょっと回りくどいというか長かった気がしたけれど、回想を挟むようにして上手く端折られた、ジリジリするような女どうしの一人の男を挟んでの心理戦はそれでも濃密に感じる。挟まれてなくて気の毒だけれど、ドニーさんの「それでもとにかく俺は佩蓉を信じるったら信じる!」という一途さと半ばヤケッパチのユーモア、めちゃ強くて気立てのいい粋なあんちゃんが爽快で、気持ち良く映画を救っている。

 

「あなたは何もわかってない、愛とは何なのか…」

人間の男に恋をした妖魔。心臓ではなく心が欲しい、と愛を求め手に入れようともがく女と、愛の為に全てを捨てる覚悟をする女の対決。

 

本当の姿を現す、というところがちょっとホラー、というか怖かった。狐の姿に戻るわけじゃないのね…というか妖の本性だからということなのか、ゾワワワワワっ、ってなりました。でも嫌な怖さは、好きだからといって、全て意のままに手に入れようとする、奪われたわけでもないのに人の立場を羨み、憎み、成り代わろうとする、欲望の表れだからなのかもしれません。

 

 

VS降魔師!というほど初めはなかなか活躍出来ないんだけど、夏冰(スン・リー)がなぜ妖魔退治の力を発揮出来なかったのか?ということもふくめ、仏教的な感じに心が問われる、美しい結末を迎えるけれど、妖魔の、好きで妖魔に生まれてきたわけでもないのに、本当の姿を見られたら、人々に恐れられ、石もて追われる…そんな辛さ悲しみも感じただけに、この狐娘のその後が気になる…と思っていたら

 画皮Ⅱもありました。

妖魔伝 -レザレクション- [DVD]

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ジョウ・シュンが1からそのままの狐の妖魔の続き、ということ以外はまるで別のお話。でも出演はヴィッキー・チャオとチェン・クンという男女3人の顔ぶれは同じ。ドニーさんが出ていない…というので期待値は下がりましたが、よかった。

 

全然別な話なんだけど、狐娘のその後…という意味でもよかったし、コンセプト・デザインが天野喜孝で、彼のイラストで読んできた小説のイメージや、絵そのままのような雰囲気、日本風で西洋風で、こりゃどこの映画だ?という気はするけれど、幻想的で本当に美しい。CGだけど世界観が立ち上がってくるように迫ってくる。

 

アクション部分はチェン・クンが暴れたおして、ボロボロになって吼えながら闘っていても美しく、一国の姫と臣下という立場だから、ハッキリしないんじゃなくて出来ない、という男心といいよかった。

個人的にはヴィッキー・チャオの、そのチェン・クンもなぎ倒し蹴り飛ばす武闘派のお姫様も、前作よりしっくり来てカッコいいったらない。強いんだけど、顔に傷を負ったことで心にも深い傷を負って…という苦しみ、真っ直ぐに刺さってくるような愛情表現。

その悲しみに触れて、ただつけ込むだけではなく、共感を覚えるように呼応しあっていく妖魔といい、ダイナミックな映像と共に、思ったよりずっとおもしろかった。

ジョウ・シュンは人間味のある役もいいんだけど、お手の物の魔性という以上に、本当に天野喜孝っぽい、絵からそのまま現れてきたような、古城に巣食ってそうな怖さ妖しさ、儚さ美しさでした。

両方見ると、まったく種類の違うファンタジーだけれど、妖魔の、最初の出来事から500年の時が過ぎた変化、悲しみの昇華も感じられて、見てよかった。

 

 

Ⅱには出てないけれど、スン・リーのまだ半人前の降魔師だけど、一緒に闘ってるのが違和感なく、ちょっと他にはないような肉体の存在感があって、ドニーさんとコンビでの妖魔退治ものをシリーズで見たくなったくらいよかった。続きでなくても、また暴れてるの見たい気がする。

 

 

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