六月に雨が

You should take your umbrella.

わが手に雨を

 

わが手に雨を

わが手に雨を

 

 

 

 ハードボイルドものだと思って借りたのだけど、読んだらちょっと違ってたように思う。ハードな女の子の話とでもいうんだろうか。

 

 

 

 

女性が主人公のハードボイルドミステリーっていうと、V・Iウォーショースキーとか検視官シリーズとか…それぞれ弱さや問題もあっても自分の職業やしていることに誇りも持っているとか
迷ったり揺らぐことはあっても、基本的には自分の意思や信念、芯のようなものはハッキリとあって、だからこそ大変な目にもあったりする、そういうヒロインを思い浮かべるのだけど

この本の主人公であるミム・ブラッカの職業は一応ミュージシャン。
ちょっと洋楽あんまり聴いていない私には「こんな感じの」って説明し辛いんだけど

 ツアーの最中に新曲が発売するなりビルボードに赤丸付きで登場していて

ほんとうの主流でのヒットをつかもうとしてる

そんなところにいる、ツアーの成功もその先のより大きな成功も目の前にしているような男女3人のバンドでミムはその音楽面を担っている作曲もするギタリスト。久々に地元に帰ってくると口座には自分でもビックリするほどの預金があって…というと華やかなイメージも湧くけれど

実際の彼女は成功しかけている自分に適応する以前に、大きな根本的な問題を抱えていてその為ツアーの最中に他のメンバーやスタッフの決定によって
途中で追い帰されるような形で地元に帰って来てる

ようはクビになりかけのミュージシャンで

音楽は愛していてその喜びもあるのだけれど、それが職業それで生きてるという自覚も欠けているのか、本当の意味では自分の人生を生きるということもまだ始まってさえいないように思え

だから年齢的には大人といえる女性だけど、女の子という感じがしてしまう。

 

 

過去のある時点で停まってしまった部分を抱えたままだから、という理由もあるのだけれど、周りの人間からすれば、成功の階段どころか、ごく普通の人生の階段からですら転げ落ちる寸前でフラフラと揺れているようで
どう見ても昇りなおすより、落ちる方が簡単で早い状態にしか見えなくて
周囲の怒ったり心配してしまう心情は読んでいるといやというほどわかって

 

本人はそのことを認められず、気付かない見えないフリをしているのか、これは問題じゃないと思いこもうとしているようだけれど

 

そこから更に唐突で不可解な出来事に巻き込まれることで、まるでゴミがいっぱいに詰まったゴミバケツを頭の上でひっくり返されたみたいに、全部の問題がいっぺんに降りかかって来て否応無くどうにかしなくちゃいけなくなっていく。

 

 

 

主人公がそんな状態なので、ちょっと好き嫌いが分かれる本なのかもしれない。凹んでる人の話は自分が凹んでる時には引きずり込まれるようで、とても読めたものじゃないと私も思うけれど

 

でも弱さや問題だらけのもうぐっちゃぐちゃのゴミまみれのような中から、たとえ針の先のような小さな光でも見失うまいとして必死になって、とてもカッコイイとも素敵とも言えない状態だけど、何とか自分が正しいと信じられることを、これだけは…とどうにかこうにかしようとするミムに

 

不器用な、何やってんのよと腹立たしくなるような向こう見ずなやり方でもあるんだけど最後の最後の反撃、ミステリーとしての謎が明かされる時
それは彼女が確かにつかんだようやくの始まりに思えた。

 

 

まだはじまりに過ぎないけれど
カッコいいハードボイルドでも謎が解けてスッキリという話でもなかったけれど、読み終わってミムの自分の手でつかんだ小さな希望に、こちらの胸にも小さなものが灯った気がした。

 

 

 

 

 

この話はシリーズものになるような感じじゃないんだけど、解説など読んでいると著者はハードボイルドシリーズも書いていて、というよりそっちが先にあって、で、これは単発ものとして出されたみたいなんだけど、私も何処かで書評か何か見たシリーズの方と間違ってこの本を借りた…と読み始めてから気がついたんだけど…読み終えて後味は悪くなかったし、翻訳されて文庫にもなってるようなのでそっちのシリーズもまた読んでみようと思う。

 

 

 

 

 

 

守護者 (講談社文庫)

守護者 (講談社文庫)