六月に雨が

You should take your umbrella.

落穂拾い

 

 

f:id:amenomorino:20140927201839j:plain

 

検査の結果はよかった。どれほど拳に力が入っていたのか、聞いた途端に力が抜けプルプルプルプル、手が小刻みに震えて止まらないまま、待ち合わせた人とクラブハウスサンドを食べに行くとまだカタカタカタカタ…珈琲の受け皿を鳴らしてしまい恥かしく申し訳なく、可笑しかった。笑った後にちょっとだけ涙が滲んだ。

 

前のリハビリに頑張っていた入院が一度終わって、予後の検査の時にたまたま別のが発見されたのだった。発見してくれたのは、技師さんだった。その後先生の説明。それでとにかく、うちの病院にはない科だから…紹介状を書いてもらい予約をとって別の病院へ。

 

ちょっと遠い、大きな病院はなんだか落ち着かなかったけれど、慣れない所のほうがよかったのかもしれない。不安はあったけれど、すべてがわりあい機械的のように運ばれていくほうが、いいと思った。

そして動揺したり感情的になっている暇も実際あまりなかった。これはこうこう、こういう状態でこうしたほうがいい、ということになると、すぐさまいつ入院予定でその前の術前検査はこの日になります…

スピーディーにどんどん決められ、入院に必要なものはこの前色々揃っていたからよかったね、などと旅行にでも行くような会話をして

あっちへこっちへ、術前検査であれだこれだ調べOKでーすとなったら、入院に関する説明。病院によって色々違うんだな、とこの時思った。

 

実際に入院してみると、とても明るい、清潔な雰囲気の病棟で、4人部屋の個人のスペースのカーテンは、けれど昼間もずっときっちり締め切られていて、普通に歩く靴音に遠慮してしまうほど、シンとしていた。

静かな所だな…術前日は先生の説明、麻酔科の話と忙しかったので、それほど気にしている暇もなかったけれど、考えてみれば、微妙な所なのだった。

命の生まれてくる場所でもある病棟。

病室はもちろん別で、分けられ、区切られてはいるけれど、廊下に出れば大きなお腹で腰を自分で支えながら歩いている人、廊下を通り過ぎる赤ん坊の声。

それは私にとっては懐かしいものであったけれど、私のように小さな部品を一つ取るだけ、その後はまだわからないけれど、もう子供もいるし、いい年齢だし…と思っても、なんとも言えない気がする、そんな病気だったり、もっと重い症状の、年齢も様々な女性が、同じ一つの場所にいる。

静かにしていよう、していたいと思う空気。

 

大島弓子のグーグーをこの間読んでいたら、漫画ではわりとあっさり簡単に書かれていて、あぁ映画とは違うんだなと思ったけれど、でもあの映画での病院の描写、夜に一人で歩く姿…あの辺りは他の大島弓子の漫画をとても思い出す描写だった。

きっとこの映画を作った人は、グーグーだけでなく大島弓子の漫画がとても好きなんだなと思った。大島弓子のふわふわとして柔らかい線、絵だけれど、不思議な奇病であれ、その状態や、周囲や本人の心情の表現は、ギュッと両手を握りしめてしまう、胸が詰まってしまうような。

そんなとても大島弓子らしい気がしたあの病院でのシーンは、多くを語らなくても色々な心模様が描かれているのを、そっと息をひそめるようにして見ていたけれど。

 

夜はシンとして、体はみんなおとなしく静かにしていたけれど、一人一人の心はそれぞれに一人の夜を歩いているようだった 空間。

昼間の検査に行き、明るいロビーに座っているけれど、今もあの長い夜の廊下を私の一部が歩いているような気がしてしまう。それは悪いほうに考え過ぎるのもいやだけれど、良いほうに考え過ぎて心が大きく躓かないよう、用心のために、だろうか?

一年、一年、後姿のように遠ざかって行くんだろうか?

今はまだわからないけれど、ともかく

今年はさようなら。

 

家に帰って、擦り寄ってきた小さな生き物の、温もりに、感触に、やっぱりあれは何であれ、根を張っていたり実っていたりする稲穂とは違う、別のものなんだ、自分の一部であったとしても、まだ数年幻のように見て、自分の事なのに置きざりにしたままのような気がしてしまうけれど、今の私はこちらの側にいて、夜の旅路を共にできない。だから落穂拾いに行っているようなものかな、と、残っていた気がする自分の気配にやっぱりまだ今はさようならを言えてよかったと思った。

 

 

病院のどこでもあまり変わらない所は外来の廊下に、明るくもないけれど暗くもない、どうでもいいといえば本当にどうでもいいような(描いた人には申し訳ないけれど…)微妙な絵が飾ってあったりする所。

本を読んでいても集中しきれなくて見ているうちに、子供の頃ずっと「落ち葉拾い」だと思い込んでいて、一枚一枚手で拾うなんて大変だ、箒で掃けばいいのに…と思っていた絵も思い出したのかもしれない。

 

 

 

 

グーグーだって猫である [DVD]

グーグーだって猫である [DVD]

 

 

広告を非表示にする